摂食障害とは、食行動にさまざまな問題が生じる精神疾患である。拒食症(神経性食思不振症)と過食症(神経性大食症)に大別される。
日本では1960年代に報告されて以来、患者数が急増している。有病率は約1,000人に1人を超える。10~20代の若い女性の多く発症するが、30代以降の女性、さらには男性にもみられる。治療を受けない患者や、治療を中断してしまう患者もいて、実際の有病率はさらに高いと考えられる。
摂食障害の要因
摂食障害の要因には、生物学的要因、心理的要因、社会的要因がある。それぞれが複雑に絡み合っている。
生物学的要因
脳内物質のうち、精神の安定や生体リズム、睡眠、体温調節などに関与するセロトニンと、意欲や学習、運動調節などに関与するドーパミンなどの障害によって摂食障害が引き起こされるとされる。
心理的要因
親との関係が険悪だったり、対人関係に悩みを抱えていたりすることで発症する。女性になることの嫌悪感や肥満に対する恐怖なども要因と考えられている。ストレスが摂食障害を引き起こしやすい。
社会的要因
「痩せていることが美しい」という社会的・文化的な背景が要因となる。「痩せている=自己管理ができる=成功」「太っている=自己管理ができない=失敗」のような対立図式から、痩せを美化する一方で肥満を嫌悪するようになり、ダイエットに励むあまり発症する例も多い。
拒食症と過食症
摂食障害の代表である拒食症と過食症を紹介する。一見すると両者は全く別の疾患のようだが、根本には痩せへの願望や肥満への恐怖が存在する。拒食症の後に過食症となることもある。
拒食症
拒食症は、食べ物を食べない状態、もしくは食べられない状態が続く。自ら嘔吐したり、下剤を乱用したりすることもある。
適正な体重の15%以上の痩せがみられ、低血糖や脱水などの症状が表れる。長期化すると、脳の機能が低下して空腹を感じなくなったり、低血糖などの状態が気持ちよくなったりすることもある。女性の場合には月経が止まることも多い。
痩せても痩せても「もっと痩せたい」と願い、少しでも太ると「自分が醜い」と思いこんでしまう。その根本には負けず嫌いな性格があり、歪んだ自己愛にも通じている。
過食症
過食症は、ストレス発散のために短時間で大量の食べ物を食べた後、自ら嘔吐したり、下剤を使用したりすることを繰り返す。単なるやけ食いとは異なり、「痩せていない自分は嫌い」「太った自分は醜い」といった思いが常につきまとい、食べた後に自己嫌悪や自己否定につながる。これらのマイナス感情がまたストレスとなり、次の過食を引き起こすという悪循環がみられる。
嘔吐や下剤乱用によって体内のカリウムが大量に失われ、低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が低い状態)になりやすい。これは不整脈や筋力低下、麻痺などを引き起こす。嘔吐の繰り返しによって、歯のエナメル質が勇んで溶けたり、食道に炎症が生じる食道逆流性食道炎になることもある。
摂食障害の治療
心と体の両方を治療する必要がある。まずは検査によって心身の状態をチェックし、医師と相談して治療方針を決めることから始める。
心の治療では、精神療法や家族療法などが行われる。体型や体重が幸福につながるわけではないことを理解させ、適切な自己評価を行えるように促していく。ストレス発散の方法を過食以外に見つけられるように患者を支援することもある。医師はカウンセリングによって患者とともに課題解決の方法を模索する。
体の治療では、栄養の摂取が求められる。患者は栄養士とのカウンセリングにもとづいて、規則正しく栄養バランスの取れた食生活を実践していく。うつや強迫症状がみられる場合は薬物療法も併用することもある。
摂食障害をテーマとした作品
摂食障害自体をテーマにした作品ではないが、ガリガリに瘦せ細った女優を採用した作品は存在する。たとえば、『飽食の時代の奇跡!「乳が貧しい分、感度は豊かなんです」ガリガリあばら骨浮き出る炉利っ娘15名収録 4時間』は、15名のガリガリ女を見ることができる。